エリアガイド小布施
小布施町は豊かな気候風土が生み出す農産物と、歴史と文化が薫る町並み・田園風景が魅力の「栗と北斎と花のまち」。
そして、訪れなければわからない「大切なもの」がここにはあります。
小布施は「逢う瀬」
人と人が出会う交流の地
文化薫る観光地でありながら、千曲川(信濃川)など3つの川に囲まれた扇状地にあり、穏やかな農村風景に心安らぐ小布施町。町の東側に位置する雁田山の麓には、縄文・弥生時代の遺跡、古代の盛土古墳が残り、歴史とロマンを感じます。戦国の武将福島正則や江戸の浮世絵師葛飾北斎、俳人小林一茶ゆかりの古寺の周辺には散策路が整備され、山麓にはおぶせ温泉が湧くなど、地元の人たちの憩いの場にもなっています。天気に恵まれたら北信州の山々や北アルプスを望む露天風呂でのんびりするのもおすすめです。
千曲川の舟運が発達した江戸時代には、ふたつの川とふたつの街道が交わる北信州の経済の中心地として栄え、善光寺平の特産品があちらこちらから集まり、「六斎市」という月6回の市も開かれていた小布施町。情報や物、人が活発に行き交ってきたこの町は、昔もいまも新しい出会いと刺激に満ちています。
北斎晩年の肉筆画に対面
その迫力を肌で感じる
江戸末期、小布施の豪農・豪商であった高井鴻山は、江戸で葛飾北斎と出会います。その後、鴻山に招かれた北斎が、はじめて小布施の地を踏んだのが83歳の頃。それから小布施を4回も訪れ、晩年の集大成である肉筆画の制作に打ち込みました。そして、北斎89歳、晩年最大の作品「八方睨み鳳凰図」が小布施で完成しました。雁田山麓の岩松院本堂の天井絵として、21畳もの大きさで描かれた極彩色の鳳凰図は、希少な岩絵具をふんだんに使用していることから、当時のままの美しさで観ることができます。
昭和51(1976)年にオープンした「北斎館」には、小布施で描かれた北斎の肉筆画40余点のほか、北斎の天井絵が艶やかな2台の祭り屋台を常設展示しています。
鴻山は、北斎以外にも佐久間象山など多くの文人墨客を小布施に招きました。高井鴻山記念館では、幕末の志士や文人たちとの交流の場となった鴻山の書斎兼サロン「ゆう然楼」や北斎のアトリエ「碧漪軒(へきいけん)」も公開されています。
江戸の情緒と文化の薫り
町を歩く醍醐味
小布施を訪れて感じるのは、おもてなしの温かさ。その根本には「外はみんなのもの、内は自分たちのもの」という町民文化があります。町・個人・事業者が協力し、情緒漂う魅力的な町並みを残そうと取り組んだ町並修景事業の成果として、北斎館周辺では歴史的建造物が店舗などに活用され、栗の木を敷き詰めた「栗の小径」では、たくさんの人が散策を楽しんでいます。
町並修景をきっかけに、自分たちの町を愛する気持ちは多くの人々を刺激します。個人の庭園を一般に公開し、来訪者との交流を楽しむ「オープンガーデン」もそのひとつ。人口1.1万人、世帯数3800余の小さな町ながら、130軒のオープンガーデンが登録されています。
芸術家を受け入れ、芸術文化を愛する風土が連綿と受け継がれてきた小布施では、「小布施ミュージアム・中島千波館」や「日本のあかり博物館」など、美術館・ギャラリーが多く、徒歩圏内で多種多彩なアート鑑賞を楽しむこともできます。花と緑が多い沿道でひと休みしながら、町内あちこちをめぐってみましょう。
人々の暮らしを豊かにする農業、
訪れる人を楽しませる食文化
小布施には、古くから栽培されてきた「小布施丸なす」や「小布施栗」をはじめとする伝統的な農産物のほか、クッキングアップル「ブラムリー」や酸果桜桃「チェリーキッス」など、ここでしか出会えない「小布施の味」があります。
その代表が室町時代に栽培がはじまったといわれ、600年以上の歴史を持つ栗。栗栽培に適した酸性の礫質土壌の扇状地で代々栽培されてきた小布施栗は、なんといっても風味が格別。まんまるにふくらんだつやつやの栗は、栗おこわや栗菓子となって町内各地でそれぞれのお店の味を楽しめます。とれたての農産物を使った軽食やジェラードなども手軽に購入できるので、町歩きを楽しみながらお気に入りの味を見つけてください。
町内には4つの酒蔵があり、そのうちひとつではワインと日本酒を醸しています。おみやげとして購入するのはもちろん、旬の食材を使った料理とともに、ぜひこの町で味わってください。
恵まれた気候風土に感謝し、先人から受け継いだ芸術や食の文化、人との交流を大切にしている小布施町。この場所がたくさんの人々に好まれているのは、外の人も内の人も一緒になって、この場所ならではの恵みを喜び合える、そんな温かさが感じられるからではないでしょうか。